見事な脱却!倒産の危機を乗り越えたアコムの経営改革とは

「過払い金返還」が出来るまでは順風満帆

1990年代バブルが崩壊し、約20年もの間日本は不景気にみまわれていました。しかし、消費者金融業界はそれとは逆に、「バブル状態」でした。人気タレントを使ったCMなど記憶に新しいですね。そういった手法も要因の一つでしょう。なぜ消費者金融業界が儲かっていたか?その大きな理由としては、日銀の超低金利政策のおかげで、消費者金融業者が取引銀行から低金利で資金を調達できたことで、そのお金を、利息制限法が定める利率ではなく、刑事罰が適用される出資法の制限利息で貸し出すことで、大きな利益を得ることができたことにあります。

さらに「サラ金」と言われ敷居がかなり低いことで、給料日前などちょっと困ったときに借りられるのが特徴です。しかし、担保を取らない分、貸し倒れリスクの管理には独自のノウハウが必要で、その分だけ人件費や、各種システムの運用コストがかかります。故に金利を銀行ローンより高く設定することで成り立つサービスなのです。


 

グレーゾーン金利問題発覚&経営難

当時の法律で利息についてのものは、利息制限法出資法の二つあり、その上限が異なることからグレーゾーン金利問題に発展するわけです。(詳しくはこちら⇒過払い金請求を分かりやすく解説!

2006年1月に、利息制限法を超える金利を事実上無効とし、払いすぎた利息は過去をさかのぼって返還を請求できると決まったことで、その問題がクローズアップされ、「過払い金返還請求」が殺到したのです。

大大的に報じられ、CMなどでも放映されたことにより、「過払い金」というワードは誰もが知っているものとなりました。

これにより経営難にみまわれた消費者金融業界。倒産を余儀なくされる会社も少なくありませんでした。会社としては、予想以上に最悪の事態です。とくに、すでに完済した人まで返還請求の対象になっていたので、これはまさに予想外の致命傷。グレーゾーン金利の撤廃が公布されたおよそ一年後の2007年3月期の決算では、大手消費者金融4社(アイフル・アコム・武富士・プロミス)の赤字額は、1兆7000億円を超えました。

このうちアコムは、3500億円もの特別損失を計上、4400億円もの最終赤字となるも、それがピークではなく、2010年の改正貸金業法完全施行の年、再び多額の損失を計上します。2011年3月期決算時で約2026億円の最終赤字となりました。1000億円規模の赤字を二度形状するのは上場企業としては異例です。


 

アコム、決死の経営改革で立て直す

2007年3月の決算を終えてすぐ、アコムは大きな一歩に出ます。他者のどこよりも早く、制限利率を12~18%(現在は4.7~18%)に引き下げ、業界を驚かせました。狙いは「顧客サービスの向上」です。貸金業規正法の上限利率よりも下げてしまうことで、新規顧客を過払い金の対象者から除外することができます。もちろんメリットもあります。何より顧客の信頼をいち早く取り戻す必要がありました。

この後アコムは大規模な経営改革を進めていきす。

  • 不祥事が多発したことを受けたコンプライアンス(法令順守体制)の強化
  • 総量規制・新金利体系においても利益が出せるよう、コスト構造改革による経営の効率化
  • 新たな成長戦略の構築

まずは不祥事を防ぐため、社内体制の強化と社外の有識者を招いたコンプライアンス委員会を設置しました。

また、有人店舗を135店舗削減し無人店舗に再編しました。これにより700名程度の人員削減など、大規模なリストラが行われました。

また、関連グループ企業と重複する業務の見直しや、事務の効率化を進めました。さらに、アジアを中心にしたローン・信販事業の拡大のほか、三菱UFJフィナンシャルグループとの資本提携強化を進めつつ、相乗効果が見込める企業との業務・資本提携を進めていくこととしました。

これらの改革を残高を減らしながら、過払い金請求の対応に追われながら行うのはかなり大変であったと思います。

その後努力が実り、ピーク時の半分以下に貸付残高が減ったものの、2012年3月期からは利益を出し続けられるスリムな経営体質になりつつあるようです。

業界に先駆けてサービス向上を図ってきたアコム。素晴らしい快進撃は今現在も、生き延び続ける伝説として消費者金融業界の看板を背負っています。